登記前の準備 ― 4つの基本事項の決め方

1. 本店所在地の決め方

会社設立時には「登記上の住所=本店所在地」を決める必要があります。
登記簿謄本・印鑑証明・税務署届出などすべてこの住所で管理されるため、後から変更すると費用と手間が発生します(登録免許税3万円〜+書類一式再提出)。
以下の表で代表的な3つのパターンを比較します。

■選択肢比較:本店所在地の選び方

選択肢メリット注意点・デメリット
自宅・初期費用がかからない・すぐに登記可能
・通勤不要、郵便物も確実に受け取れる
・光熱費の一部を経費にできる
・一般的な賃貸物件では「事業利用禁止」の可能性が高い
・所有マンションの場合でも、管理規約違反になる可能性あり
・登記簿やWeb上で住所が公開されるため、プライバシーリスクあり
賃貸オフィス(レンタル含む)・バーチャルオフィスに比べて信用度が高い
・来客、打合せ、郵便管理などがしやすい
・初期費用(保証金・敷金・家賃)がかかる
・固定費が高くなる
・移転時は登記変更が必要となり、再度費用が発生する
バーチャルオフィス・安価に登記住所を取得できる(数千円/月〜)
・プライバシーを守れる
・都心住所を名刺やサイトに使える
・郵便転送サービスあり
・実体のない事業所として審査に影響する場合あり(銀行口座・助成金など)
・金融機関によっては口座開設を断られることがある
・一部の行政許可・免許(例:古物商など)が取得不可の可能性あり

💬 ワンポイント解説

  • 信用重視なら実体のある住所」「コスト重視ならバーチャルオフィス」。
  • どちらを選んでも、後から移転・変更は可能だが登記変更には再度手数料・書類提出が必要

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2. 事業目的の決め方と記載例

会社設立時に定める「事業目的」は、会社がどんな事業を行うかを示す重要な項目です。
実際に行う事業だけでなく、今後3〜5年以内に予定している関連事業も含めておくと、後から登記変更をする手間を省けます。
ただし、目的を入れすぎると「何をする会社なのか」が分かりづらくなり、銀行や取引先からの信用に影響することもあります。
実施の見込みが低い内容は無理に書かず、最後に「前各号に附帯関連する一切の業務」を入れておけば、関連する周辺業務をカバーできます。

事業目的の決め方

  • 実際に行う事業を明確に記載する。
    現時点で提供しているサービスや、会社設立後すぐに始める予定の業務は、必ず目的に入れる。
    登記簿に載る「事業目的」は、会社の活動範囲を示すものであり、実態と合っていないと信用を損ねるおそれがある。
  • 将来的に行う予定の事業も入れておく。
    今すぐではなくても、3〜5年以内に開始を予定している関連業務があれば記載しておくと、後の登記変更を省ける。
    ただし、あくまで「関連性のある将来事業」にとどめることがポイント。
  • 入れすぎは逆効果。
    あまりに多くの事業目的を並べると、「この会社は何をする会社なのか」が分かりづらくなり、
    銀行口座開設や融資、取引審査などで不利に見られることがある。
    実際に行う予定がないもの、検討段階のものは無理に入れない。
  • 確度の低いものは包括条項でカバー。
    将来的に関係するかもしれない業務や、今後発生し得る関連事業については、
    個別に書くのではなく、最後に「前各号に附帯関連する一切の業務」と記載しておけば十分。
    この一文が“関連する周辺業務も行える”という意味を持ち、事業の柔軟性を確保できる。

事業目的の記載例

NG例OK例
インターネット事業インターネットを利用した情報提供サービスの企画・運営
コンサルティング経営およびITに関するコンサルティング並びに研修の企画・実施
物販インターネットを利用した商品の販売および輸出入
ソフトウェア事業ソフトウェアの企画・開発・販売および保守
教育事業ビジネススキルに関するセミナー・講習会の企画・運営
広告事業デジタル広告の企画・制作・運用および広告枠の販売
メディア運営ウェブメディアの企画・編集・運営および広告枠の販売
制作事業ウェブサイトおよびアプリケーションの企画・制作・運用
データ事業データ解析およびそれに付随するレポート作成業務
EC代行ECサイトの企画・運営および受託運営業務

3. 資本金の決め方

資本金は会社の信用力運転資金に直結する重要な項目です。
登記後に変更するには、株主総会や登記手続きが必要となるため、最初の設定が非常に大切です。
一般的には100〜300万円の範囲で決めるのが多く、創業初期の資金計画や信用面のバランスがとりやすい金額です。

■ よくある誤解

  • 借入金は資本金にできません。
    資本金は、あくまで出資者(発起人)が自分の資金を会社に出すお金です。
    銀行などからの借入金をそのまま資本金に充てることはできません。

■ 少なすぎる場合のデメリット

  • 銀行口座開設や取引先の信用審査で不利になることがある。
  • 「1円会社」など極端に小さいと、実体のない会社と見なされやすい。
  • 運転資金が不足し、設立直後から資金繰りが厳しくなるケースも。
  • 社会保険や各種税金の支払いを見落とすと、すぐにキャッシュが足りなくなる。

■ 多すぎる場合のデメリット

登録免許税(登記時の手数料)も増える。
→ 株式会社の場合、登録免許税は
「資本金 × 0.7%(ただし最低15万円)」
となるため、資本金が大きいほど登記時の負担も増える。
例:資本金300万円 → 税額21,000円(最低税額15万円が適用)
  資本金3,000万円 → 税額210,000円

■ 判断の基準

観点少額(1円〜100万円)標準(100〜300万円)多額(500万円〜)
銀行審査通りにくい場合あり一般的に問題なし有利だが実質的メリットは小さい
信用度低い安定高い
運転資金不足しやすい必要十分余裕はあるが拘束される
税負担軽い通常消費税課税対象になる可能性
登録免許税最低15万円最低15万円資本金が増えるほど上昇

■ 決め方の考え方

  • 初年度の運転資金+αを基本に考える。
    固定費(家賃・通信費・人件費など)×3〜6ヶ月分がひとつの目安。
  • 少なすぎず、多すぎず。
    実務的には100〜300万円前後が最も多く、登記・税務・信用のバランスがとりやすい。
  • 「見栄え」で大きくしすぎない。
    銀行や投資家は金額よりも、資金計画や事業実態を重視する。

4. 決算月の決め方

決算月とは、会社の1年間の経営を締める月のことです。
この月の末日が会計年度の終了日となり、税金や決算書の提出時期もこれに連動します。
決算月の設定は自由ですが、最初に決めた月を毎年使うことになるため、慎重に選ぶことが大切です。

■ 決め方の一般的な考え方

決算月の決め方には、主に次の2通りの考え方があります。

決め方内容向いているケース
① 設立月に合わせる(設立月の前月を決算月にする)もっとも一般的な方法。
例:10月設立 → 翌年9月決算。
設立月の前月を決算月とすることで、初年度がほぼ1年間になるように調整できる。
初めて起業する方、繁忙期がまだ定まっていない方におすすめ。
無理なく会計・税務の準備期間を取れる。
② 事業内容に合わせる事業の繁忙期・閑散期を考慮して、作業が落ち着く時期を決算月にする方法。
例:飲食業→2月決算(年末繁忙期を避ける)
季節によって売上変動がある業種や、事業の繁忙期が明確な場合に向いている。

■ 一般的な傾向

  • これから起業する多くの方は、設立月に合わせて(前月決算)設定しています。
    例:10月設立 → 翌年9月決算。
    こうすることで、初年度をほぼ1年とし、会計処理や税務申告の準備に十分な時間を確保できます。
  • 事業が安定してきたら、業務サイクルに合わせて決算月を変更するケースもあります。
    (登記変更で対応可能です)

■ 例外的な決め方

  • すでに顧問税理士がいる場合は、その税理士の繁忙期(例:3月)を避けるように設定することもあります。
    税理士の対応がスムーズになり、決算処理の質やスピードも安定します。