はじめに
印鑑や実印を作る際、名前の最後に「印」や「之印」といった文字が入っているのを見たことがある方も多いでしょう。しかし、これらの文字が何を意味するのか、なぜ使われているのかは意外と知られていません。この記事では、「印」や「之印」といった文字が印鑑に用いられる理由や意味、そして「捨字(すてじ)」という概念について詳しく解説します。
「印」や「之印」とは何か?
印鑑における「印」や「之印」は、印面に彫られる文字の一部であり、多くの場合、個人の名前の後に付けられます。たとえば、「山田太郎印」や「山田太郎之印」といった形で見られます。
これらは「捨字(すてじ)」と呼ばれるもので、実際には重要な意味を持たない装飾的・形式的な文字です。主に以下の目的で使われます:
- 印面のバランスを整える
- 偽造防止
- 格式を持たせる
捨字の歴史と由来
「捨字」の概念は、古く中国や日本の印章文化に起源があります。特に公的な印鑑や書画における落款(らっかん)において、書き手の名に「之印」などを加えて格調を高めるために使われてきました。
- 中国の書画文化の影響:印章の伝統が日本に伝わる中で、儀礼的な意味合いを持つ捨字も広まりました。
- 江戸時代の商習慣:実務上の印鑑にも「之印」などが用いられるようになり、現代の実印や銀行印にも見られるようになりました。
「印」と「之印」の違い
用語 | 意味 | 使用例 | 備考 |
---|---|---|---|
印 | 「印鑑」を表す形式的な字 | 山田太郎印 | 最も一般的 |
之印 | 「〜の印」という意味でやや格式が高い | 山田太郎之印 | 書画や落款に多い |
どちらを使っても法的な効力に差はありませんが、デザインや印象に違いがあります。実用目的では「印」が多く使われ、芸術的・装飾的な印鑑には「之印」が好まれる傾向があります。
実際の使用例と注意点
例えば、銀行印や認印では「山田太郎印」という形が多く見られますが、公的な書類や落款印には「山田太郎之印」が使われることもあります。どちらを使うにしても、以下の点に注意が必要です。
- 印鑑登録の際の名称に一致していること
- 一貫性を持たせること(複数の印で表記が違わないように)
印鑑作成時のポイント
捨字を入れるかどうかは自由ですが、以下の点を考慮して決めるとよいでしょう:
- 用途に応じた選択:実務的な場面では「印」、格式を求めるなら「之印」。
- 印面の美しさを重視する:バランスが崩れる場合、捨字で補うのが一般的です。
- 偽造対策:捨字があることで複雑さが増し、偽造の難易度が上がります。
まとめ
「印」や「之印」は、印鑑の見た目や意味を豊かにするための「捨字」として使われています。必ずしも必要ではありませんが、印面のバランスや美的価値、偽造防止などの観点から、今日でも広く用いられています。印鑑を作る際には、用途や印象に応じてこれらの捨字を使い分けるとよいでしょう。